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  旅日記 no.279
「ジェローム・ロビンスが死んだ」
2010年1月27日
「ジェローム・ロビンスが死んだ」こんにちわ。金丸です。
今日は「ジェローム・ロビンスが死んだ」の話です。

「ジェローム・ロビンスが死んだ ミュージカルと赤狩り」津野海太郎著(平凡社)を読んだ。ミステリアスで、それまで知っていたミュージカルのことが、根底からひっくりかえるほど驚きに満ちた内容だった。

「踊る大紐育」「王様と私」「パジャマ・ゲーム」「ウエスト・サイド物語」「ファニー・ガール」「屋根の上のバイオリン弾き」などがロビンスの演出や振付や原案などである。そのロビンスが、赤狩りとして知られる非米活動委員会に引き出されて8人の友人を共産党員として証言した過去を持つというのが本の内容。さらにユダヤ移民の二世で同性愛者であった。

著者はロビンスの死亡記事(1998年7月30日)を観て、学生の頃、夢中になって観たジーン・ケリーとフランク・シナトラが主演した「踊る大紐育」のロビンスが、かつて赤狩りの時代、仲間を裏切った過去があることに衝撃をうける。(僕もそう)

いまさらミュージカルでも赤狩りでもあるまいと思ったものの2001年9・11で、アメリカが突然変貌して、まるで軍事国家のようになったことに衝撃をうけて、1950年の赤狩りの真相をロビンスをとおして背景を浮き彫りにしようとの試みである。

僕だけでなく、ミュージカルファンなら、誰しもが彼の振付や演出になる作品を観ているだろう。最後の舞台「ジェームス・ロビンス・ブロードウエイ」は、ニューヨークで観ている。ロビンスの時代、ナチスドイツの台頭とユダヤの迫害がある。その後、冷戦時代があり、共産党が台頭して、左傾した者への弾圧が始まる。

赤狩りによって、映画の関係者が公聴会に引き出され、共産党が弾圧される。つまり公開の告発である。これによって、烙印をおされた映画や舞台人の何人かは、仕事を失い、自殺をするなどが起こった。この赤狩りの模様は、ジュージ・クルーニー主演の「グッドナイト&グッドラック」に登場する。

この本によってばらばらに見えていたものが、パズルのように繋がる。津野さんはインターネットとさまざまな文献をたどりながら、「あのロビンスがなぜ仲間を裏切ったか?」の真相を浮き彫りにする。そこに冷戦、迫害、移民、貧困、メディアを使った政治戦略などが浮かび上がる。編集者であり演劇家である津野さんならではの巧みな本の構成で魅せられた。日本のミュージカルの関連書籍では、時代と政治に切り込んだ初めての試みではなかろうか?

津野さんには何度かお会いしている。このところ、たて続けてに3冊読んだ。最初は「おかしな時代」(本の雑誌社)を本屋で見かけてからだ。ここには、黒テントを建てたいきさつや、晶文社にいたるまでの津野さんの編集修行のことが出てくる。とくに仲人の高平哲郎さんや、その義兄であった小野二郎さんのことが詳細に出てくる。さらに斎藤晴彦さんやあんばいこうさんを始め知っている人たちが何人も登場する。

とくに仲人で7年間一緒に仕事をした高平哲郎さんのことが描かれていて、わからなかったことが、なるほどこんなバックグランドにあったのかと理解ができて、なんだかすっきりした気分だったのだ。自分の関わった人たちが、どんな関係なのが、当時は、まるでわかっていなくて、お会いしていた人がたくさんいたからである。

その次に読んだのが「したくないことはしない 植草甚一の青春」(新潮社)である。植草さんの本は、僕も読んだ。編集に携わったのが津野さん、それに高平哲郎さん。植草さんはちらりをしかあってないが、植草さんの青春時代に仲間だった野口久光さんとは、晩年、ほんの数年、お仕事をさせていただいた。その野口さんのことも、詳細に出てくる。津野さんの3冊は、僕の身近にあった人、ミュージカルから、その時代やバックグランドを教えてくれて、とても興味が尽きないのだった。


金丸弘美(食環境ジャーナリスト・食総合プロデューサー)
◎総務省 地域力創造アドバイザー
http://www.soumu.go.jp/ganbaru/jinzai/pdf/b022.pdf
◎内閣官房地域活性化応援隊地域活性化伝道師
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/tiiki/070415meibo.pdf
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